見たのがだいぶ前なので、うろ覚えな部分もあるのですが……。
なおこの投稿はネタバレを気にせず展開されます。ご覧になっていない方は公式サイトで確認のうえ、お近くの劇場に足を運んでください(お早めに!)。こちらには(気が向いたら)再度、ご来訪ください。
さて感想を。
韓国でも保守的と言われる大邱へと越してきた高校生のギョンファンは、当時タブーとされていた日本文化の隠れファン。
「オタク(用語が間違っている気がするけど^^;)」と馬鹿にされてもMP3プレイヤーにはJ-popがたくさん入ってる。
彼の隠れた趣味に気がついたのは隣の席で学級委員のジェミンさん。彼もまた日本文化のファンであり、2人はあっという間に仲良くなった。
ジェミン君の距離の詰め方が強引かつ早いので序盤のノリはBLドラマ※
イヤフォンを分け合いっ子したり、髪をクシャクシャしたりと、タイの日本の韓国の、BLドラマでいつか見たよなシチュエーションが「こんなペースで最後まで持つのか」という勢いで繰り出され、必然2人のBLドラマ的ハッピーエンドを期待せずにはいられなくなる。
ニヤニヤしている内に物語は中盤に。
「なんで頭をなでるんだ?」
という淡い期待がこもった言葉で始まるギョンファン君の告白は、手に汗握る緊迫感。
仮に……。
ここでジェミンがギョンファンの想いを受け入れていたら、僕は劇場で人生初の「っしゃ!」って声をあげたかもしれません^^;
しかしながら。妄想のクラッカーで「おめでとー」する気まんまんだったボクの期待は、ジェミンの強烈な「NO」という意思表示で弾け飛ぶ。
かといってジェミンの反応が意外かというとそうでもありません。
古くは『アメリカン・ビューティー』に、比較的最近の映画なら『ある少年の告白』にも出てくるように同性に惹かれる自分を認められない人が、強い態度で拒絶したり、マッチョな自分を演じたりする例は過去にもあって、
ジェミン君もおそらくはそのパターン。
とはいえ、ギョンファン君は友達を好きだった事がばれて転校してきた過去があるので、気持ちを表に出す事にものすごく慎重になっていたはず。
そんな彼でも、期待するなという方が無理な位、積極的なアプローチをしておきながら「僕らのこの感じはもーただの友達じゃないですよね?」と切り出された途端、全否定するのはちょっと残酷すぎないかと思います。
この中盤以降、ギョンファン君の人生史上最悪の日々が韓国映画らしい容赦のなさで描かれて、最終的にはギョンファン一家は大邱市を離れることになる。
ギョンファンを演じるシム・ヒョンソ君の複雑で独特な感情表現もあり、ギョンファン母子を襲う理不尽に苛立ち、そんな中だから互いを理解しあうようになる、母子の素朴なやりとりに、ほんのり胸が熱くなります。
この映画が一番伝えたいのは、中盤のこの「現実のままならなさ」なのだろうなと感じました。
エピソードの順序が巧みというか……。
前半は「同じクラスの気の合うやつが、オレの事を好きらしい(そしてオレもやつが好き)」という夢のような現実を描いた後で、今より閉鎖的な時代の閉鎖的な街で暮らすマイノリティの憂鬱な現実を描くので、その落差でどちらの現実も際立って見える。
これが順序が逆だと「夢のような現実」はただの「夢」か「願望」として受け取られかねないし、つらすぎて見る人を限定しそうです。
最後には和解するのでは?
(気持ちがあるのは誰の目にもバレバレな)ジェミンは「全て」とは行かなくても、自分の気持ちを認めて、ギョンファンに想いを伝えるのでは?
という甘い期待も虚しく、ジェミンは一言も自分の気持ちを語らずに、ギョンファンの人生から去っていってしまう。
雪の振る大邱市の夜、自分を拒否った相手からの呼び出しという「一発大逆転なるか?」というタイミングで、たしかオリジナルの劇伴が流れていたように思うのですが、個人的にはこの曲を筆頭に作品独自の劇伴(サントラ)が、とかく注目をあびているGlobeの曲よりも強く印象に残っています。
Departuresは孤高を装わざるを得ないギョンファンの境遇や心情には、フィットしていると思いますが、一視聴者目線で見ても憂鬱な日常に身を置くギョンファン君に優しく寄り添ったのは、サントラの素朴な曲の数々(あまり多くはないですが)だと思います。
時は流れて……。
年下の彼氏を連れて実家に戻ったギョンファンおじさんは、ジェミンに別れ際に突き返されたGlobeのアルバムを見つけ、違和感を覚える。
アルバムの中には、ジェミンが開設したのだろうサイトのURLが貼られていた。そしてそこにはジェミンの想いがびっしりと書かれていたのだろうけれど……。
20年以上の時が経った今、ギョンファンはそれを知ることはできない。
「猟奇的な彼女」の現実離れしたラストシーンにグショグショになる主人公の物語としては、だいぶドライな結末で、物語は一度「夢のような現実」を離れた後はエンディングまで「夢」を見せる事なく終わっていく。
余談になりますが、現代パートのギョンファンが「親不孝だ」と漏らす言葉は、ボク個人も感じるところで胸に刺さる台詞でした。
直に告げる勇気がないから。彼だけに知ってほしいから。
ジェミン君にはそんな想いもあったのかもしれませんが、伝え方が回りくどすぎて、結局ギョンファンには届かない。
前述の態度の豹変も含めて、良い時も悪い時も、ジェミン君は自分の気持ちが前に出すぎて、相手がどう感じるかを想像しない(もしくはできない)。彼にもう少し余裕があったら、結末は違っていたのかもかしれないな、と思いつつ……。
周りの見えなさとか、恋に恋して空回りする感じこそが、この年頃らしい恋なのだろうし、そういう意味では、この物語は割と誰にでも共感できる「幼い恋の物語」なのだな、とも思います。

読んでくれてありがとう。また別の作品で。



