タイBL、タイドラマに浸かる日々|サバイなブログ

タイBL、タイドラマを中心にアジアのドラマ・映画について語ってます

Young Royals:ヤング・ロイヤルズ シーズン3。「選択する」事の価値を謳った後味のいい最終シーズン

シーズン2で噛ませ犬として頻繁に登場していたMarcusさんは、このシーズン3では(見過ごしてなければ)ただの一度の登場なし。

王子が同性との恋にビクビクしていたシーズン1。Simon君が「愛人」扱いにはなりたくないと王子を避けていたシーズン2を経て2人はついに恋仲に。しかも成り行きでスウェーデン中が知るカップルになったのだから、かませ犬の出番がないのも当然ではありますが^^;

 

シーズン2でのうっぷんを晴らすかのように校内所かまわずにイチャイチャするのを「目の保養」と楽しんでいられるのは、しかし序盤戦だけで……。

スウェーデン発のBLドラマ『Young Royals S3』の感想を 

 

 youtu.be

 

シーズン2では常に緊張状態にあったSimonと王子。今シーズンでは基本、パートナーとして並走するので2人のいさかいは小競り合い程度。

2人の物語は、旧弊残る「王室」という世界で「愛」だけを武器に関係を続けようとする2人の共闘とその失敗に費やされます。

突如「王室」に関わる重要人物に格上げされたSimon君が、手足を縛られて急速に目の輝きを失っていく様子が描かれますがその急降下ぶりが凄まじく、そりゃこの世界に物心つく前に放り込まれた王子がメンタルに問題を抱えてるのも、いたしかたなしと感じます。

話が進むにつれて「王室」という世界のいびつさに2人の関係も毒されていき、最終話直前の第五話で、ついにというか早々にというか、Simon君が「王室」という場所にギブアップ。

「この2人はうまくいかないで終わるのか?」

という最悪の結末を予感させて最終話への突入します。

 

王子、Simon連合軍が王室と勝ち目の戦いを挑むなか、シーズン2のラストで一転すべてを失ったSaraの再スタートの物語、王子とSimonの関係が公になった事で突如明らかになったヒーレシュカのスキャンダルの真偽、そしてシーズン1でこの世を去った王子の兄、Erikがそのスキャンダルに関わっていた事などが並行して描かれます。

Erikの事故死は物語全体に非常に大きく暗い影を投げ、シーズン2、3を通して作品のトーンを重くしているわけですが、その彼の知られざる一面が暴かれた事が、元からあまり安定してない王子のメンタルをこの最終盤になって強く揺さぶる。

一方のドン底からの再スタートになったSaraの物語は、絶縁状態にあった父との関係修復や運転免許の取得と小さな成功体験を重ねていって、後半に行くに従って希望の見える展開に。親友Feliceとの関係復縁で、共に「心を許せる友人がいない」という自分達の物語をキチンと閉じて、すぐ後に遅れて飛び込んでくる王子とSimonを迎え入れます。

実の息子の誕生日なのに温かい言葉の一つもかけない母親と、その母親を情け容赦なく糾弾する息子という、地獄のような一家団欒に恐れおののいたSimonは「とてもついていけない」と王子に別れを切り出した。

王室のグロテスクさをまざまざと見せられた後では、全ての物事が好転してSimonと王子がこの世界で仲良くやっていきました、なんて話にリアリティを感じられない。

かといって……。王子とSimonにハッピーな結末を与えて欲しいと思うのは、ここまで作品を見てきたファン共通の願いでもある。

その答えとして用意されたのが、王子が王室から離れ(はっきりとは書かれませんが王位継承権をAugutに譲って)私人としてSimonと一緒になる、という「選択」。

保守的な王室の一員だという事と同性の恋人と幸せに暮らす。

この2つを並立させて欲しかったという思いもあったのですが(たぶん多くの人もそう思ったと思うのですが)「与えられた物をただ受け入れる人生ではなく、自分で選んだ人生の方が価値がある」というメッセージを強く打ち出す事で「逃げ」とも取られかねない王子の行動を前向きに表現しています。

王子の「選択」に驚いて、声もなく涙するSimonの表情からキスする2人。

新緑の森のアーチの中を自分の人生を「選択」した4人が1つの車に同乗し去っていくラストシーンまで「希望」しか詰まってない疾走感あふれるエンディング。

その最後の最後で、いつものように厳しい視線を向けるのではなく、かといってにこやかに笑みを返すでもない自然体の王子の目線に見つめられるラストカットで物語は見事に着地。

3シーズンに渡っていいドラマを提供してくれてありがとう。

そして、読んでくれてありがとう。また別の(アジア系の)作品で、