タウィーとの最終決戦を描いた前後編、といっていい内容でしたのでまとめて。
Not Me。第13話・第14話の感想を
反対運動の盛り上がりで窮地に陥ったタウィーさんにとどめを刺そうと「作戦」を実行に移すBlack一味。
と言いつつも目覚めたBlackさんはすでに別行動を取っていて、仲間として加わっているのはみんなに認知されたWhiteさん。
くわえてYokさんが(惚れた弱みで)絶大の信頼を寄せる警察官UNARさんも加わって作戦が実行に移された。
彼らの作戦は常に穴だらけなのですが、今回はYokさんが信頼を寄せるUNARさんがその信頼に応えきれずに、彼らを窮地に陥れるという驚きの展開が待っていました。
罪の意識に苛まれ、よなよなバンコクのバンクシーとして社会風刺を続けながら、警察組織内部からの浄化にまだ望みを託している。
繊細な人物として描写されてきた経緯があるので、この最終盤での裏切りというか、変わりきれずに仲間を危地に追いやってしまう彼の選択には説得力がありましたね。
Seanの父を殺してしまったという罪悪感のうえに、さらに新しい罪悪感を重ねる事になりながらも「上」の言葉に従わざるを得ないUNARさんと、彼に惹かれて、彼を信じて仲間に引き入れたYokさんが絶望の涙で顔面グチャグチャになりながら彼を非難するシーンが最も引き込まれるシーン。
物語的には「最後の最後でUNARさんが救援に駆けつけ彼らを救う」という展開が王道かつ胸アツなのですが彼はそこまでにも至らない。
罪悪感に涙するだけで、最後までヒーローになれない彼の姿には哀れみと共感を覚えます。
タウィーの舎弟に拉致られたBlack一味を救うのは、彼らの告発がきっかけで盛り上がった市民運動の群衆達。
彼らが救援に駆けつけた理由も個人的には斬新で「犯罪は法で裁かれるべきで、私刑で消されるべきではない」という物。
このドラマ自体がずっと「法」について語っているので、当然といえば当然の帰結ではありますが、そもそも大規模なデモが発生しずらく、さらにはそれがなし崩し的に状況を変えてしまうような大きなうねりを起こす事は稀な国に住んでいますと、ワラワラと押し寄せた群衆が車を取り囲んで、あれよあれよという間に主人公達を救出してしまう。という展開は斬新でしたね。
序盤で(Whiteが成りすましていた)Black達と「法」について議論を交わしていた女性が、最後にポロッと語る「今は法律に正義がない」という言葉も、なかなか垣間見る事のできない市民感情の発露のようで爪痕を刻むセリフでした。
そしてこんだけ「法」について語ってくるドラマなので、ここまで延々14話に渡ってグレーどころかブラックな行為を行ってきた主人公達も「法」でキチンと裁かれそうなのもフェアな展開。
Black兄さんはボコられたからボコりかえせと死なない?程度にTodを病院送りにした後は、新しい人生を掴みにいって、WhiteとSeanはそして末永く幸せに暮らせそう。
序盤にWhite探偵の推理を大きく捻じ曲げるきっかけになったGramさんもムショ生活でも希望を胸に生きていけそう。
残りは絶望の涙を芸術に昇華させたYokさんと、変わろうともがいたあげくに新たな罪悪感を積み上げる事になったUNARさん。彼は涙ながらの謝罪と共に「次こそはYokとの約束を守る」と決意する。
人間もそして社会もそうそう変わらないものですが、より良い方へと変わりたい、より良い方へと変えていきたいという想いが生まれてこなければ、そもそもなにも始まらない。
今回3度目のやり直しを始めたUNARさんの姿を見ているとしみじしそう思いました。
というわけで全14話これにて終了となりました。
それなりに密着度の高いシーンもありながら、最後までBLドラマという感覚にはならず視聴した後、少し考え込んでしまう強いテーマ性を持った作品でした。
最後まで読んでくれてありがとう。
また別の作品で。