キングダム。ソウル・ステーション。と続いた韓国ゾンビ物。
3つ目の作品はこちら「新感染ファイナル・エクスプレス」
ダジャレ入ったタイトルから判ってしまうかもしれませんが、高速特急とゾンビをミックスしたアクションホラームービーです。
新幹線を擁する我が国で、なぜにこのアイディアが実現しなかったのか。
悔しくなるほどに面白く、最後は「ちくしょう。汗が目に入って、前がぼやけてよく見えないぜ」とうそぶきながら感動の涙を手でぬぐう。
とても優れた作品です。
というわけで。
新感染ファイナル・エクスプレスの冒頭部分のあらすじを
ソグはファンドマネージャー。
日夜、仕事に忙しく家庭の事は省みない。
その日は娘・スアンの誕生日。
しかし妻(別居中)と実母に任せきりだったソグには子供の欲しがる物すら判らない。
部下に尋ねて買ったプレゼントも、スアンはすでに持っていた。
娘が代わりに欲しがった誕生日プレゼント。
それは釜山で暮らす母親に会いにいくことだった。
仕事を理由に一度は却下するソグだったが、実母に諭され、娘を釜山まで送っていくこことになる。
始発の高速特急TKXに乗れば、昼には釜山から戻ってこれる。
ソグとスアンはTKXに乗り込んだ。
初老の姉妹に、試合に向かう野球部員。
妊婦と一見ヤクザなその旦那。パンデミックから命からがら逃れてきたホームレス。
多くの乗客と従業員を乗せたTKXはソウル駅を出発する。
発射直前に走り込んだ、怪しい女を1人乗せて。
人が人を襲い、襲われ死亡した人もまた人を襲いはじめる。
前日の夜中に発生し、ソウル・ステーションを中心に急拡大している謎の感染症。
彼女はその犠牲者だった。
彼女は程なく発症し、TKXのクルーに噛み付いた。
こうして車内のパンデミックが始まった。
と、ここまで。
新感染ファイナル・エクスプレスのみどころを
なんといっても「娘と乗った超特急の車内にゾンビが現れ、次々と人を襲っていく」というアイディアが秀逸です。
感染者が出て、パンデミックが起こり、生存者が疑心暗鬼に駆られ、仲間割れを起こしながら、一人また一人と命を落としていく。
構成としてはゾンビ物のお約束にかなり忠実です。
にも関わらず、舞台設定を「列車の車内」にほぼ限定。
これがパンデミックの展開を早める、つまりは物語の展開を早めています。
好きなように逃げられる通常のゾンビ映画とは違い、狭い車内でソグ達が逃げられる場所は限定されている。
娘や妻を助けに行くにも迂回路はなく、ゾンビがうろつく車両をどうにかして通り抜けないといけない。
障害を前に逃げることは許されず、必ず立ち向かっていかなければ目的を達成できない。
という状況は、物語に強い引力を与えていると思います。
だから見始めたら最後、途中で辞めるのが難しいです^^;
登場人物の全員が乗車前まで一般市民だったわけで、ゾンビと切った貼ったのアクションを繰り広げたりもできません。
なので、ゾンビ物というよりは、エイリアンとか13日の金曜日とか、怖い怪物に見つからない様にどう逃げるか。
というスプラッター・ムービーっぽい恐怖感を楽しめます。
その割に残酷描写は少ないので「血が苦手」という方でもギリギリ楽しんでみれるのではないでしょうか。
ちなみにこの作品。
ソウルステーション・パンデミックの続編にあたります。
続編というよりも時系列的には繋がっている感じ。
ソウル・ステーションのラストシーンあたりには、今作のソグとスアンはTKXへ乗るために車の中にいる。
というくらい直後のお話となってます。
とはいえ「ソウル」のキャラクターが登場したりはしません。
別個の作品として楽しめます。
アニメと実写という映像フォーマットの違いはあれど、監督は同じヨン・サンホ。
「ソウル」は、オーソドックスなゾンビ物のストーリーの中に、強い社会批判を織り交ぜた作品。
今作はエンタメ色が強く打ち出された作品という印象を受けました。
似ている要素があるとすれば、主役を含めた登場人物が、ビジュアルや物語の中での立ち位置から想像する人物像とは少しずれた個性を与えられている。
という部分かなと思います。
今作の主役はファンドマネージャーのソグという人物。
コン・ユさんというイケメン役者が演じているし、主役なので正義感あふれるいい人なのかと思いきや……。
仕事面でもプライベートでも、自分の事しか頭にない「知的ではあるがイヤなヤツ」という個性が与えられています。
なんといいますか……。
自分ひとりだけ助かろうと逃げ出して真っ先に殺されるタイプのキャラです、通常のお話であれば^^;
その反対がマ・ドンソク演じるサンファ。
登場シーンでは、連れの「2人」をトイレに籠もらせ、イチャコラさせてる風俗の元締めのように描かれますが、実は……。
という展開で直情傾向のあつくるしい中年オヤジ。
でも信頼に足る人物。
という側面を強調しています。
登場人物がボクらの先入観とは少しづつ違う個性を与えられているということが、物語の展開に意外性をもたらしているし、物語後半の泣かせる展開に繋がっていると思います。
見て体感してほしいので詳しくはふれませんが。
小道具の処理の上手さ、娘・スアンを演じる子役の大熱演もあり、ラストはこの手の作品には珍しい感動が待っています。
詳しくは言えませんが、ほんと。自然とこみ上げてくるものがあります。
開始早々引き込まれ、そこから2時間、アクションとサスペンスの連続で、ほとんどダレることなくクライマックスに突入し、最後には感動に涙できるこの作品。
ぜひ見て欲しいなぁと思います。
Netflix、Amazon、DVDで視聴する事が可能です。
というわけで。韓国ゾンビ物特集はこれにて最後?
待て次号。