タイBL、タイドラマに浸かる日々|サバイなブログ

タイBL、タイドラマを中心にアジアのドラマ・映画について語ってます

韓国ドラマ「ナビレラ-それでも蝶は舞う-:Navillera」みんな、ドクチュル爺ちゃんを好きになりすぎている

このドラマが凄いのは。

これみよがしのどんでん返しや意外な展開をラストにぶつけて「こんなところで終わるなよ!」と飢餓感を掻き立てるわけじゃ全然ないのに、ぼんやりと先の展開が気がかりで、ついつい一度に視聴する話数がかさんでいくこと^^

というわけで7話以降はペースをあげて、一気に最終話までコンプリートしています。

そんなナビレラ後半戦の感想を

70歳からの手習いでバレエを始めたドクチュルおじいちゃん。

失笑ぎみだった周囲の人を、やる気と努力に物をいわせた結果でねじ伏せ、ダンサーとしてステージに立ちたいという夢が射程範囲に入ったか!

と思った矢先に、辛い秘密が明かされる。

以降ネタバレかましますよ

 

 

 


www.youtube.com

ドクチュルおじいさんはアルツハイマーを発症していたのでした。

「一体いつからなんだろう?」

という疑問がたぶん誰の頭にも浮かびます。

僕が「お爺ちゃん、まさかのアルツハイマー?」と気がついたのは、自宅を出ようとしたお爺ちゃんが「財布を忘れた」と言い出したシーン。

入れる必要がまるでないエピソードなので「まさか」と思ったのですが、よりわかりやすい伏線はその数話前、バレエの衣装を買うシーンにも貼られていました。

くそう。なんで気がつかなかったんだろう。

それどころか。
なんと一話の時点でお爺ちゃんはアルツハイマーを発症していたのでした。
というよりも。
チェロクと出会う事になったのも、和菓子屋を出た直後に症状を発症したせいでした。
皮肉な話といいますか。
アルツハイマーにかかった事がお爺ちゃんにとって、良い事なのか悪い事なのか(いややはり良くないのでしょうけれど)若干判らなくなってきますね。

病気にならなければ、お爺ちゃんは長年の夢に手を伸ばす事なく人生を終えたかもしれないので。

 

中盤まで「暇を持て余したお爺ちゃんが、今こそ周りの目なんて気にせずに、長年の夢を叶えよう一念発起する」という話だと見せかけていたこのドラマ。

この爆弾をぶちまけるに至って

「自分が、長い年月をかけて作り上げてきた自分でいられる残りわずかな時間を使って、叶いっこない長年の夢へ悲壮な覚悟でチャレンジをする」

話に様相を変えます。
というか元からそういう話だったので、見返してみるとドクチュルお爺ちゃんがチェロクに語る言葉の数々にはその決意の程がちゃんと表現されていたのでした。

 

 

 

以降は、

お爺ちゃんの病状をいち早く知ってしまったチェロクの苦悩。
お爺ちゃんの病状を知らされて動揺し、結束を固める家族の苦悩。
加速度的に症状が悪化していく中「自分」を保つ要でもあるバレエにこだわり続けるお爺ちゃんのエピソードを中心に据え

「ステージでバレエを踊りたい」

という、お爺ちゃんの長年の夢に向けて物語は突き進んできます。

意外にもさほど明るさを失わないので、作品のトーンが大きく変化するわけではないのですが、後半は大いに泣かせます。

水でビシャビシャの手ぬぐいを、雑巾しぼりしましたよ。
ってくらい号泣させられるのですが、そこに大きく寄与してくるのがチェロク、おじいちゃん、双方が舞う美しいバレエ。

素人目には経験者なのか?と思わせるバレエダンサーらしい体格のチェロク役・ソンガン君の踊りが美しいのはもちろんの事。

中年太りのお爺ちゃんが雪の降る中、たどたどしくも一生懸命に踊るバレェもまた美しい、というか神々しい。

日々の練習で培った物は。体に刻まれた物は。記憶をなくしてしまった後も、あなたの中にちゃんと残り続ける。

それを表現するのにバレエというモチーフはまさにうってつけ。
これを表現したいから逆算でバレエが選ばれたんじゃないかと感じる程に、テーマを簡潔にそして美しく表現しています。

チェロクのお父さん問題をはじめ、色々な問題をすべて危なげなく収まるところにきれいに収めて、最後まで明るさをなくさない(けど体内の水分は搾り取る)華麗な着地でドラマは締めくくられました。

と、このまま大絶賛で終わってしまうのがスマートかと思うのですが、やはり少し気になった事を書いておこう。

 

 

 


中盤に炸裂した「お爺ちゃんはアルツハイマーにかかってました」という展開。

努力だけではどうにもならないでかい問題をぶちあげることで「本当にお爺ちゃんはステージでバレエを踊れるのか?」という展開に強い緊張感が生まれたし

「人生は一度だけ。やりたい事は今やらないと」

というドラマのテーマに強い説得力を与えたとは思うのです。

が!

一方でこれまでお爺ちゃんとは距離を取ってた人たちや、彼の選択に疑問を感じていた人たちに、異論を許さない状況を作ってしまったようにも思います。

チェロクは3話を超えたあたりからすでにお爺ちゃんへの態度を軟化させてましたけど病気の事を知って以降は、自分のことはそっちのけで(君もまだプロにはなれてないのにだ)お爺ちゃんの夢を叶えてやろうと奮起する。

「70歳の老人がバレエなんて」と言ってた人も病気の事を聞いた途端に批判のトーンを弱めていって、みんなが大なり小なりお爺ちゃんの夢を応援するようになっていく。

みんながみんな、お爺ちゃんの夢を応援する、サポートするようになった事で

「年齢のせいで不可能だと思っていた夢を、お爺ちゃんが自力でつかみとった」

という印象が薄まってしまったように感じます。

 

たとえばステージ出場をかけたオーディション。

尺がとても短いし、なにが審査員に評価されるのか判らない。

2話でチェロクが出したテストのような、見ていて判りやすい試練がこのオーディションでは設定されない。

だからお爺ちゃんが落ちてしまうかも、という部分での緊張感はあまりない。

「この展開なら、絶対お爺ちゃん受かるでしょ」

と思ってしまう。そう描かれてるわけではないけど、お爺ちゃんの夢を叶えるためにシナリオの段階で手加減してくれている、ように感じられてしまったのです。

それがほんの少しだけ残念に感じました。

 

ま、細かい事を書きましたが。

とても良くできたお話ですし、前述したとおり後半はバスタオル必須の水分量を貴方の目から奪っていく感動の展開が続きます。

ぜひご覧くださいませ。

読んでくれてありがとう。
また別の作品で。

 

 

f:id:rukacchii:20211011174439j:plain