これで最後(になるはずの^^;)
韓国ゾンビ物 「生きている」の感想を
韓国・ソウルに家族とマンション暮らしをするオ・ジュヌ。
いつもどおりゲーム漬けの彼がマルチプレイをしている最中に、ソウルでは謎の疫病が発生。
凶暴化した人(ゾンビ)によるパンデミックが発生、彼の住むアパートもすぐにゾンビの巣窟と化し、ジュヌは部屋から出られなくなる。
家族は外出中でマンションには彼1人。
家族写真に「生き延びる!」と書いたメモを貼り、自分を奮い立たせるが、水道、電気、ネット回線と生活に必要なインフラが壊れていく中で、ジュヌは生きる希望を失っていく。
安否不明だった家族も別の場所でゾンビに襲われ命を落とした事を知ったジュヌは、ついに心折れ自殺を決行。
しかし!
というのが冒頭3分の1くらいまでの展開です。
起承転結の「起」にあたる物語の世界観や人物紹介を極端に削り、開始数分で疫病発生、ゾンビ出現、閉じ込められてさぁ大変。
というスピード展開でゾンビパンデミックが広がっていきます。
ゲーム漬けの少年がマンションに閉じ込められて孤軍奮闘。
同じく韓国ドラマの「Sweet Home」と設定の既視感は強いのですが、映像から受ける印象はだいぶ違います。
SweetHomeについてはこちら
本作ではゾンビとの格闘に(少なくても序盤は)時間を割かず、 親元で甘やかされて育った普通の男子が、突如自分の能力のキャパを超える非常事態に放り込まれて手も足もでない。
その様子を緊迫感を保ちながらも、わりかし静かに描写していきます。
食べる寝る、以外に出来る事はなにもなく、しかし部屋で静かにしている限りはゾンビに襲われることもない。
人物紹介の時間を大胆に省いて、ただ部屋をウロウロするだけの無為の日々を長めに描写したこの序盤。
序盤こそゾンビの群れに追いかけられて、てんやわんやの大騒ぎになりがちなゾンビパンデミック映画としては、少し新鮮な展開です。
自力で状況を覆すことができず、無力感を強めた彼の心をボキッと折るのが、不安定な通信回線のせいで聞くことができなかった家族からのメッセージ。
序盤こそ、ジュヌの安否を気づかう内容だったそれは、ゾンビに襲われ、逃げ惑う家族の叫び声に取って代わる。
これを1人ぼっちで聞いた彼。
怒りに任せて部屋を出るも狭い通路にひしめくゾンビに追いたてられて、元の部屋へと命からがら逃げ戻る。
この失敗が彼の心を完膚なきまでに打ち砕き、彼は自殺を決行する。
から物語は急展開。
孤立している者同士が知恵を働かせコミュニケーションの手段を確立していく様子と、互いの存在を支えに、生きる気力を取り戻す様が描かれます。
クライマックス直前まで続くこのパートは、似たような高層集合住宅が近い距離に林立するアジアの都市に馴染みのいいアイディア。
地上には、うじゃうじゃゾンビがいて合流するのは容易ではない状況で、コミュニケーションを確率するためにどうするのか?
新旧様々なアイテムを駆使しながら、高度なコミュニケーションを取り戻していく様子がこのパートの中心で、やはり対ゾンビのアクション要素は控えめ。
2人が別々の場所にいながらも同じインスタントラーメンを作って食べる、という描写が個人的には一番印象に残りました。
人が「生きる」意味を見出すためには、他者の存在が必要で、食を共にするというこのシーンはそれを端的に表現している気がするのです。
終盤も面白いのですが、わりとよくあるアクション映画、ゾンビ映画になってきます。
個人的には序盤から中盤のらしからぬ静かな展開を楽しませていただきました。
待て次号!