今回はネットフリックス初のタイ語オリジナルドラマ「ロスト・イン・ウォーター 神秘の島」について紹介しようと思います。
原題はThe Stranded。「取り残されて」位のニュアンスでしょうかね。
ロスト・イン・ウォーター神秘の島のあらすじと魅力をざっくりと
タイの孤島にある全寮制の(裕福なお子様達の)高校を巨大な津波が襲った。
その日はちょうど卒業式を終えたばかり。
卒業パーティーに残ったわずかな生徒(36名)は孤島に取り残される事になる。
ここまでが物語のセッティング。
開始10分程度でセッティングを完了した後、ドラマは複数のプロットが入り組みながら同時並行していきます。
この方式、いわゆるマルチプロット方式といいまして、ハリウッドなどの海外ドラマではメジャーな手法です。
古くは「24」から今年完結を迎えた「ゲーム・オブ・スローンズ」まで、世界的な広がりを見せたドラマの多くがこの方式を採用しています。
本作にも多大な影響を与えているだろう「Lost」もこのマルチプロット方式。
各プロットの面白い部分(盛り上がってる部分)だけをドラマの中に織り込めるので、終始緊張感を失わず、視聴者の関心をつなぎとめる事ができます。
ちなみに本作品のおおまかなプロットは大体以下のとおりです。
プロット1
電波もなく、一向に救助隊が来る気配もない状態に苛立ちを募らせる中、彼らは一艘の小型ボートを見つけた。
リーダーを自認するアナン(Anan)はこのボートを修理して救助隊を呼びに行く事を提唱する。
なすすべもなく、その日暮らしを送るだけの生徒達はそこにかすかな希望をつないだ。
彼らは手分けしてボートを修理する。
プロット2
一方、嫌われ者のオタク少女?アリサ(Arisa)は校内の倉庫から見つかった古いテープレコーダーを修理する。
ほどなく見つかったテープを再生すると、そこには古い歌が残されていた。
彼女はその歌に隠された謎を解き明かそうと知恵を絞る。
プロット3
ジャック(Jack)は津波で足を怪我した。
彼氏のクリット(Krit)、姉のジャン(Jan)はジャックを励まし介抱するが、満足な医療設備も医師もいない状況で足は日に日に悪くなっていく。
プロット4
生徒の中で唯一島で生まれ育ったカーム(Kram)は悪夢に悩まされるようになる。
リーダー格のアナンは自分を露骨に下に見ている。
そしてカームはそんなアナンの彼女であるメイ(May)に心惹かれている。
遭難するまでは一言も言葉を交わしたことのない片恋の相手とやりとりが増えるにつれ、彼の想いは大きく育っていく。
プロット5
遭難から一月以上が経った頃、思わず人物が彼らの元を訪れる。
一見以前と変わらないその人物は、しかし不可解な言動を取り生徒を惑わせる。
とまぁ、大きく分けるとこの位のプロットが同時進行していきます。
5が引き金となって3の物語が急展開し、1の物語を大きく揺さぶり、4と2の波状攻撃が加わって物語は怒涛のシーズンエンドに突入する。
という感じで、プロット同士が作用しあって予想外の展開を作り出す。
そんなマルチプロットドラマの面白さをロスト・イン・ウォーターは存分に堪能できます。
ロケーションの美しさも本作の魅力の一つ。
エメラルドグリーンの輝く海あり、鬱蒼と茂るジャングルありと、どんなジャンルのドラマにもフィットするロケーションが、ウチの国にはゴロゴロあんだぜ?
とでも言わんばかりの絶景スポットが大放出。
ドラマを視覚的に盛り上げます。
外見も性格も多様性にあふれた魅力的なキャラクター達。
画一的になりがちな「高校生」という属性なのに、どのキャラクターも個性的。
そんな個性的な登場人物を、役者さんも踏まえてご紹介しましょう。
カーム
堂々の主役。学園で唯一の島の子で長距離潜水が得意。
お坊ちゃまばかりの学校で、漁師の息子ということで下に見られがち。
性格的にはニュートラルで特長がないぶん「出生の秘密」という飛び道具で視聴者の関心を惹きつけます。
演じているのはBeamさん。
他の出演作としては映画版のWater boyyや、Project S Spikeがありますね。
アナン
ダブル主演の敵役。
父の影響でリーダーであることを自身にかしているが、カリスマにかけ肝心な時にリーダーシップを発揮できない。
大事な局面でリーダーシップを発揮するカームに暗い対抗心を抱いている。
全7話を通して、自分に確たる自信を持てなかったアナンという少年が「島の王」として覚醒していくまでを描いているのがシーズン1。
覚醒した方向はアレですがここまでの事実上の主役はアナンと言っていいでしょう。
演じているのはMarchさん。
代表作のHormonesでは、彼氏と彼女を天秤にかける優柔不断の嫌な奴を演じていましたが、今回も地味にいけ好かない嫌な奴を好演されています。
メイ
アナンの彼女で「天使のメイ」と言われている学園のヒロイン。
しかしバンコクにいた頃の彼女は親の借金のために水商売めいた事に手を染めていて……。
という設定。
演じているPatさんは、ProjectS SOSでは心療内科の新米カウンセラー役をやられております。
アリサ
機械オタクの嫌われ者。
視聴者人気をごそっと持っていきそう個性的なオタクキャラ
かと思いきや、意外とえげつない一面も持っている事が物語中盤で描かれます。
このドラマの魅力の一つが、アリサの造形にも反映されている裏表のあるキャラクター。
好印象の人物が常に正しい事をするわけでもなく、ダークサイドに堕ちていく人物にもそれに至る同情すべき理由がある。
こいつはイイやつ、こいつ悪いやつと単純に切り分けられることができないリアルな人物造形がドラマに深みを与えています。
脱線でした。
アリサは非常にアクティブな性格で「謎」にまつわるパートをグイグイ前に引っ張っていきます。
演じているのはChaleedaさん、ほぼほぼ新人ですが役がいいのでここから跳ねるのではないでしょうか。
イン
無駄にフェロモンを振りまくただのお色気担当かと思いきや、アリサとともに「謎」の解明に関わったり、彼氏を「だめ!薬物」とたしなめたり、知的な上に常識人でもありました。
演じているのはTichaさん。
日本にはなかなかいない東南アジア的な美人さんです。
アイス
インの彼氏のマッチョマンで、一人ワイルドな魅力を振りまいております。
強がって、ヤンチャなフリをしているものの過去に起こした事件のトラウマに今も悩まされている。
演じているのはJackさん
クリット
タイの学園ドラマお約束のBLパートを担当するメガネっ子。
演じているのは大ヒットBLドラマLove by chanceのAeでおなじみPerth君。
あらゆる意味でギラギラしてたAeとは違って、今回は内向的で口数もすくなく大人しそうな少年を自然に演じておりまして「役者として成長が期待できる、いい役をもらったな」という印象です。
そうだ、相方のJackとの間に迫真のキスシーンが合計3回ございます。
LBCの時より「がっつりむさぼってんじゃね?」という激しさ。
中盤まではBLパートとして独立して進んでいくのですが、中盤クリットがやらかした事がきっかけでメインのプロットが急展開していきます。
ジャック
足を怪我して衰弱していくクリットの相方。
病床にふせっている関係で、見せ場はクリットとのキスシーンと回想シーンのベッドでの語らいのみという感じです。
演じているのはMarkさん。
ジャン
ジャックの姉であり、クリットの元カノ。
自分ではなくジャックを選んだクリットに複雑な感情を持っている。
ジャックへの執着の強さなど序盤からメンヘラっぽさを感じましたが、中盤で第二形態に、クライマックスで第三形態に化けていく。
「島の王」がアナンならば、彼女は「島の女王」みたくなっていきます。
演じているのはPamさん。素はなかなかおちゃめな人ですね
他にもリッチマンだけどカームの友人ジョイとか、
コメディリリーフと見せかけてBLパートだった男子2人とか、
第六感が発達してる超能力少女のNahmといったキャラクターも活躍しますが、
多すぎるので割愛しました。
ちなみにそんな主要キャストのプロモーション動画も(本国では)ございます!
こちらだだん!
英語も日本語も字幕がないので、簡単になにをしているのか説明すると。
このドラマは日本も含めて世界各国に公開されます。
公開予定の国の言葉を聞いて、国名と場所を当てるクイズをやってます。
一番最初は我らイープンです。
マークさん、日本の位置関係を把握していないかも?疑惑が……。
というわけでロスト・イン・ウォーターについて語ってみました。
正直、全容が見えていないがために語りきれていない部分も多くて……。
たとえばカームの出生の秘密に大きく絡んでいるはずの超常現象っぽい部分、インディージョーンズとかハムナプトラとかを連想させるジュブナイルっぽい展開も、このドラマの大きな魅力の一つなんです。
映画「ミスト」や「屍鬼」のように極限状態に置かれた人たちがおぞましい思考に取り憑かれ変容していく様も興味深い。
「無人島でのサバイバル」という設定に、あらゆるジャンル映画のエッセンスをぶちこんで、かき混ぜてみましたというこの作品 。
男子だったら楽しめること間違いなしだし、海外ドラマ好きにもおすすめできる。
そしてBLパートも2組いるっぽいので、諸腐兄姉にも楽しめる……かも?^^
ご視聴は現時点ではネットフリックスのみですが、日本国内でもご覧になれます。
というわけで。
待て次号!