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韓国ドラマ『スタートアップ:夢の扉』アラサーを主人公にした満足度高めの青春起業ドラマ

その名が示している通り……。自らが描く「より良い社会」の実現とか、成り上がりたいとか、金持ちになりたいとか、野心を旨に起業を志した若者たちの奮闘と成長を描く物語。

……と。

一括りにその魅力や内容をまとめられない(でもとんでもなく面白い)

韓国ドラマ。START UP:夢の扉の感想を


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以降、それなりにざっくりとネタバレします。

若き起業家達に、失敗を恐れず自らの夢を実現するための場所や設備を提供するスタートアップ支援施設「Sandbox」。

VCのチーム長、ハン・ジピョンはSandboxで開催された起業家向けセミナーに参加した。

ハンと共に壇上にあがった若手起業家のウォン・インジェ女史が、集った若者達の質問に答えていたその最中、ある女性がマイクをつかみ挑みかかるような目でインジェに質問をぶつける。彼女の名はソ・ダルミ。

聞き覚えのある名前にジピョンは過去の思い出を呼び起こす。

 

 

 

一話は以降、かなりの時間を割いて過去の出来事を描いていきます。

過去編のメインとなるのは孤児院を年齢制限で追い出された天涯孤独なジピョン少年とダルミの祖母・ウォンドクが出会い、共に暮らし、そして勘違いを発端に離れる事になるまでの疑似家族としての交流と、ウォンドクの発案で始まるナム・ドサン(ジピョンの偽名。新聞で記事になっていた少年の名前を騙った)とダルミの文通、そしてそこから生まれる淡い恋心の2つ。

どちらも全16話ある物語に大きく影響を与えるエピソードですが、特にジピョンとウォンドクのエピソードは、我も、気も、強いがゆえに素直になれない2人のかけあいが本当の家族のようで微笑ましいので、2人の物語の結末となるバスターミナルのシーンでは「最終回ですか!」というくらいに泣かされます。

余談ですが、この若いハン・ジピョンを演じているナム・ドラムさんのパフォーマンスが素晴らしい。「世界中が俺を食い物にしようとしている」みたいな警戒した不安そうな表情と、感極まってガードが下がってからのあどけなさのギャップが涙を誘います。

親しい人との距離感がつかめず不用意な言葉で傷つけて「傷つけた」という事実に自分が傷つく、というキャラクターはそのまんま大人ジピョンにも引き継がれていて、そこがMr.パーフェクトのジピョンさんの大きな魅力になっています。

そんな大人ハン・ジピョンを演じているのはキム・ソンホさん。

演技なのかご本人の持ち味なのか……。大人の男でありながら隠しきれない子供っぽさが垣間見え3話以降恋敵となる素朴系うつむき男子ナム・ドサンと並んでも、かっこよすぎて鼻につく感じに全然なりません。

余談2。ヤングジピョンとウォンドクが別れるこのバスターミナルのシーンの直後に始まる「桜」のシークエンスは出色の出来で、悲しく、寂しく、そして美しい。このシークエンスだけでも見る価値あり。咲き乱れる桜をこれほど美しく(そして必然をもって)描いた作品は映画を含めても僕は記憶にありません。

つづく2話は、起業家として成功している姉・インジェへの見栄で、(15年間音信不通の)ナム・ドサンを連れて姉の主宰する交流会に参加することなってしまったダルミ。そのせいでジピョンさんは再会したばかりのウォンドクから「ナム・ドサン」を探し出す任務を仰せつかって翻弄される災難を中心に描き……。

さらに3話は探し出したイマイチ冴えないナム・ドサンを、ダルミを幻滅させないよう理想の男に仕立てようと奮闘するジピョンさんを中心に描きます。

つまりはこのドラマ、1話から3話まで実際に物語を転がしてるのはジピョンさんで、しかもこの間の本筋は「起業する若者」のお話でもありません。

序盤に主役を張っていたので、ドサンとダルミをめぐって張り合う中盤において、一方的な悪役ポジションに追いやられない。

さらにはドサンとのパワーバランスが拮抗してくる後半になると、判官びいきも働いていっそ応援したくなっています。

 

タイトルと内容がマッチしてるのは4話以降〜12話まで。

初恋の人ナム・ドサンと再会(ホントは初対面)を果たし、彼の成功(ジピョンが仕立てた虚構。実際は成功してない)に感化されたダルミはSandboxの12期生に応募する。

ドサンが指揮するテックベンチャー「サムサンテック」、1から出直す事になった姉インジェらと、Sandbox入所の狭き門を争うあたりから、ドサンやダルミが物語を転がし始め、ダルミをCEOに迎え、9割ツンのチョン・ハサも加えた新生サムサンテック総勢5名が飛躍に向けて突き進むタイトルどおりのビジネス青春物語になっていきます。

なにもかもがトントン拍子で現実の起業とはまるで違うんでしょうけれど、

「高い目標に向かって突き進む」とか

「仲間と夢をおっかける」とか

織り込まれていく三角関係も含め、キラキラ感、疾走感に溢れていて「アラサーを主人公にした青春ドラマ」としての満足感が非常に高い。

即席で結成された新生サムサンテックが1つのチームになっていく展開も、絶好調から奈落の底に突き落とされる挫折の時も青春マンガそのもので、回を重ねるごとに、彼らが課題を克服するごとにサムサンテックの五人が好きになる。

この中盤に強い印象を残すのが旧サムサンテックのCEOで、ダルミの文通相手……を装うことになったナム・ドサン。

出来心でついた嘘が原因で、類まれなる才能に恵まれながら自分に自信をもてない彼が、一目惚れしたダルミのために、ジピョンに負けない男になろうとする。

しかし彼がダルミといられるのも、流れでついてしまった嘘が原因で、彼は2重の嘘に絡め取られる事になる。

ほとんど同時に3つの嘘を白日の元にさらされ、涙ながらに謝罪する姿が本当に痛ましい。

演じているのはナム・ジュヒョクさん。

泣き演技の素晴らしさに加えて(この人のめりこみすぎて過呼吸起こすんじゃないかと思った)、自己肯定感低めで人の目を見て話せない素朴青年のただずまいを自然に演じておられます。

主役のソ・ダルミを演じるペ・スジさんにも一言コメントしておくと……。

寄りでも引きでも。360度全方位どこから撮っても様になる。

表情も動きも活き活きしていて親近感のもてる共感しやすい人物を好演していました。

 

 

 

13話以降は彼らが成長しすぎてしまったせいで薄まってしまった「キラキラ感」を埋め合わせるほど、お仕事ドラマとしての密度は変わらないので^^;

「そんな簡単に行きますか?」

という印象が(能力的にも資金的にも実現可能性はあがってるのに)むしろ強くなりました。

あらゆる問題をキレイに着地させた最終回は見事だと思う一方で……。

キラキラしてる「夢をおっかけた数ヶ月間」で幕を閉じても良かったかなぁ、と個人的には思いました。

また次の作品で。