タイ以外の国の作品を取り上げるのは久しぶり。
韓国映画史上、初のアカデミー賞作品賞にノミネートされた「パラサイト半地下の家族」を取り上げてみたいと思います。
※序盤のネタバレを含みます。
「パラサイト」前半のあらすじを
ソウル市内の貧困地区に父、母、そして妹と共に暮らす20代の若者ギウ。
家族4人は揃いも揃って職にもつけず、その日暮らしを送っている。
ある日家を訪れた友人ミニョクの紹介で、ギウは学歴を偽ってスーパーリッチなパク・ドンイク一家の長女ダヘの家庭教師を務める事になる。
ドンイク氏にはダソンという息子もいる事を知ったギウ。
美術が得意な妹のギジョンをダソンの美術の先生として推薦し、ドンイク家へと招き入れる。
家庭教師として家に忍びこんだ子供たち。
2人は父と母もドンイク家へと呼びいれようとさらなる計画を巡らせる。
冒頭20分位のあらすじを、サササッと書いてみました。
「パラサイト」のここが個人的に面白かった
先進国共通の社会問題になった感もある経済格差、そしてその固定化をメインテーマとして扱ったこの作品。
意外にも
「貧困層の家族4人が、富裕層の家庭に寄生して彼らを取り殺していく過程にカタルシスが生まれる」
という方向に進みません。
同様なテーマを掲げ大ヒットした「JOKER」と大きく違うと思ったのはここんところで。
「JOKER」も貧困を固定化され蔑まれ続けてきた人を主役に据えています。
劇中、ひたすらに虐げられた人物が、ついに復讐の拳を振り上げるシーンに激しいカタルシスをボクは感じてしまったのですが。
パラサイトの主人公はそんな単純に自分たちが抱える心のモヤモヤを勝ち組にぶつけたりはしないのです。
というよりも「パラサイト」=「寄生」というタイトルが現すように、彼らは勝ち組と争ったりはしない。
ちょっと前にトリクルダウンという言葉が流行りましたが、ギテク一族が求めているのもまさにそれ。
復讐の拳を振り上げるだけの気力は彼らにはなく、
家族全員でおこぼれがもらえるだけでも私達は幸せです。
という感じでドンイク一族の生活を真面目に支えます。
そう。
彼らは無職ではあるものの、決して怠惰だったり、力が足りなかったりするわけじゃない。
ギウは大学入試に何度も失敗してはいるものの、裕福な家の家庭教師をクビにもならず努めあげるだけの力量はある。
妹には少なくても人並み以上の美術関係のスキルがあるし、父のギテクも、母のチョンソクも場所さえあれば社会に貢献できる力を持ってる。
それでも彼らは這い上がれない。
ここに至るまで、きっと色んな「計画」を試みて少しでもマシな暮らしをしようともがいたはず。
その全てが報われなかった彼らからすれば、ちょっと運が向いてきたからといって自力で這い上がろうなんて考えすらしなかったのかもしれません。
なにをやってもスマートで、人を疑う必要もないほど恵まれて生きてきた人達は、これからも変わらず恵まれた人生を歩んでいく。
自分たちは彼らに嫌われないように、振り払われずにすむように、ヒッソリと彼らの足元でおこぼれにすがって生きていく。
そんな超低空でも安定してるドンイク一族の使用人という立場にゆとりを見出したかのようなギテク一家が立ち向かわなくてはいけなくなるのは、予想とは全く違う敵でした。
このあたり物語の展開に絡んでしまうし、先の見えない展開がこの映画の大きなウリの一つなので触れませんが。
ボクは鑑賞中、日本でとても有名な名作小説のことが思い出されました。
社会問題を主題にした作品。しかもカンヌで最高賞を取り、ついにはアカデミー賞にもノミネート。
という事で逆に「小難しそう」と構えてしまう人もいるかと思うのですが、心配は無用です。
この作品、めっちゃエンターティメントとして楽しめます。
ま、エンターティメントの定義は難しいところですが。
難しい事を考えなくても、前述してきた社会問題にことさら興味をそそられなくても。
2時間とちょっと「こいつらどうなっちゃうんだろう?」とハラハラドキドキさせられる作品です。
萌えは欠片もありませんが^^;
必見の作品だと思います。
というわけで。待て次号!