タイBL、タイドラマに浸かる日々|サバイなブログ

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Netflix発。台湾制作のLGBTQ映画『君の心に刻んだ名前(Your Name Engraved Herein)』


Netflix『君の心に刻んだ名前』 予告編 (日本語字幕付き) | aka Your Name Engraved Herein

1987年。

今から30年以上も昔のお話。

日本がバブル?とかに浮かれていた頃でしょうか(浮いてた時代なんてあったのね、という感じですが)。

台湾では約40年間続いた戒厳令が解除された。

 

 

 

アハン(A-han)らが通うミッション系の男子校に転校生がやってきた。

名前はバーディー(Birdy)。

潜水の授業では死んだフリをしてアハンを驚かせ。

ある時は寮監の背後に張り付いてアハン達の部屋に忍び込んでくる。

やたらと奇行の多いバーディーになぜかアハンはなつかれる。

 

翌年。

戒厳令を解除した台湾の総統、蒋経国が亡くなった。

忌引を使えることを知った2人は連れ立って台湾の首都台北へ向かう。

お悔やみの言葉もそこそこに都会の空気を楽しむ2人。

2人で泊まった安宿で。

隣で寝ているBirdyに引き寄せられるように唇を近づけるA-han。

ルームサービスに邪魔をされ未遂には終わったものの。

知らず2人の間には友情以上の気持ちが芽生えていた。

 

現代が舞台の○○BLであれば、なんだかんだで2人は自分の気持ちに抗うことはできず、世間も「モーマンタイだよ。愛は愛だよ」と言ってくれて「そして2人は幸せに暮らしましたとさ」という展開になるのでしょうが……。

これは30年前のお話で、同性同士の恋愛に今ほど寛容ではありませんでした。

女装をして街中に立っただけで警官が暴行をくわえて連行していくし、寝顔にキスしようとしたら「そういうのは困ります」とホテルの従業員に釘をさされる。

ゲイだとバレた同級生はいじめの対象になってるし、友人ですらも「コイツといるとお前も同性愛者だと思われる」とバーディをボコボコにしようとする。

友人の行動は「良かれと思って」の行動だというところに、この時代に同性愛者への認識が未成熟だったかが伺えます。

 

こんだけ迫害の対象になることを見せつけられて、こんだけ社会的にNOを突きつけられて「それでも僕には彼しか愛せない」と恋を前に進めていくのはとても難しい。

バーディは友人の女子高生と付きあうようになる。

 

傷つき、苛立ち、不器用に自分の気持ちをぶつけるアハンだが、バーディーを自分の元に引き戻すことはできない。

2人の恋は終わりを告げた。

 

と、ここまでが30年前の高校時代のエピソード。

お話のメインとなるのはこの高校生パートなんですが。

しょーじきな話。

ここまでだったら、せっかく見たけどブログに書くほどでもないかもな。

という内容でした。

 

 

 

○○BLが世界的にブームになり、表向きは「愛に変わりはありません」と言われるようになった2020年の今、この時代の彼らの姿を描く事の意味はなんなんだろう?

と見ている間ずっと思っていたのと、

「禁断の愛」にもがく2人の描写に共感できないな。

と思ったんですよね。

バーディの心変わりに傷ついたアハンが、初老のおっちゃんにスキを見せた結果、襲われそうになるシーンとか……。

おそらくは「これを最後の想い出にしよう」と決めたバーディがアハンについて海に行き、2人マッパで^^;

海ではしゃぐシーンとか。

21世紀の今、これを見せられても喜怒哀楽のどの感情も動かなかったんですよね。

 

30年が経ち。

同窓会に参加したアハンはバーディが彼女と離婚した事を知る。

 

僕は高校時代の彼女とそのままゴールインした事にかるく驚きましたが^^;

 

さらには高校で自分の悩みを聞いてくれた神父さんがカナダのモントリオールで死去した事を知る。

モントリオールに飛んだ彼はそこでバーディと再会を果たす。

 

当時は自分たちの気持ちを貫けるような時代背景ではなかったことを淡々と語り、かつ「30年で同性婚が認められるようになるとは当時は思ってもいなかった」と微笑む2人。

 

うっかり忘れていたんですけど^^;

台湾はアジアで最初に同性婚を認めた国。

今でこそ多様な生き方を認める成熟した社会を構築しているけれど、たかだか30年前は結婚どころか、同性愛者はフリーク扱いされていた。

 

その事実を描写すること。

そして変化した現代につなげることが、この作品が「今」作られた理由なんだろうな、と感じました。

 

再会を果たしたバーディとアハンは50歳に手が届く中年男。

30年という月日は短くはないし、30年間ずっと一緒に時を重ねていければそれが一番幸せだろうな、と思ったんですけど。

でも50歳。

また恋をするのに遅すぎるということもないのかもしれないな。

社会が成熟して、それにあわせて自分たちの気持ちにも素直になれて、ようやく彼らのような(僕らか)人たちでも普通の幸せが手に入る世界になった。

これから2人が一緒になっても、そんな普通の幸せを楽しむ時間はまだ十分にあるな。

それってすごく希望が持てるな。

なんてことを感じて最後はあったかい気持ちで見終わることができました。

 

そんな予感を感じさせつつ……。

くたびれた中年男が、初恋の少年みたくもじもじするラストの会話は可愛らしいし、愛らしい。

僕はこの表現が好きではないんですけれど……。

「勇気をもらった」

気がしました^^;

 

ちなみに映画と同タイトルのエンディングソングが出ています。

映画よりも^^;

この曲の方が気に入ってしまっていて現在僕のヘビロテソングです。

 

映画の最後でバーディーとアハンが歌う、ちょうしっぱずれなヤツも「(思い出の中の)青春だなぁ」という感じで、じわっときますがやはりこちらの方が染みますね


盧廣仲 Crowd Lu 【刻在我心底的名字 Your Name Engraved Herein】 Official Music Video (刻在你心底的名字電影主題曲)

 

それではまた別の作品で。