クラスの人気者で、誰からも慕われていたPapangが自殺した。
哀しみにくれる美貌の兄は、すっきり系男子と協力しながら妹の死の真相に迫っていく(こうして書くと、意外にラノベ設定ですね)。
少し残念な事に……。
物語のほとんどが過去の出来事に割かれているので、美貌の兄の出番はさほどでもなく、今んとこ聞き役に徹する事が多いんですよね。
まぁその分は、ひねりの聴いた過去パートの人間ドラマをがっつり楽しんでくださいよ。って事なのかもしれません。
そこに関しては十分楽しませていただきました。
しかし、このドラマの構成はガチで「いやらしいな^^;」と思います。
もちろんいい意味で。
そんな『The Comments』第2・3話の感想を
一話で冒頭いきなり自殺しちゃったPapangちゃん。
いじめだったのかも……。
と、思わせる過去パートのイメージが折に触れて挿入されたので「かわいそう」「ひどい」という印象だった彼女。
2話と3話では、その印象がガラガラと崩れ落ちていく事になりました。
2話ではSingさん演じるPok君が無邪気にもクラスメイトのいる前で公開告白。
これをPapangちゃんは拒絶するわけですが、その仕方がえげつない。
差し出した一輪の花を、床に投げ捨てグシャリグシャリと踏みつける。
この場面が動画で撮影されていたので、Pok君は学校中の笑いものになってしまう。
なんとかしようと思ったPok君は、デートアプリに登録。
見事彼女をゲットして、クラス内での評判を回復する。
僕にはこの心理がよくわからないのですが。
Papangちゃんはどうにも不満だったようで(自らこっぴどくフッておきながら)「ホントに彼女なのか」どうかを探りを入れる。
そして、今回もクラスメイトの目の前で、すべてがPok君のでっちあげだった事を暴き立て、壁ドンして激しく彼を責め立てる。
えっと……。
私、この沼に入った初期の頃に「タイ人は自尊心が強いので、決して人前で叱ってはいけません」と複数のソースを読んだのですが、あれは嘘だったんでしょう……か?
Pok君のやったことは確かにPapangちゃんの言う通り犯罪行為なんでしょうけど、こうまで苛烈に糾弾されてる様を見せつけられると、Pok君への哀れみと、Papangちゃんへの反発心が湧いてきます。
あなたがクラスメイトの前で恥をかかせていなければ、Pok君も馬鹿な行動を取らなかったのかもしれませんよ、と。
実際、人前で侮辱されまくったPok君はメンタル壊して奇行に走ってぶっ倒れるし(これを見かけた時の、Papangの優しさの欠片もない態度にはゾッとする)はては屋上にあがって(おそらくは)自殺しようとする。
犯した罪と、受ける事になった罰のバランスが全然取れてない。
これが言い寄ってきたキモい男子にだけだったらまだ分かる。(それも性格的にだいぶアレだと思いますけど)
しかし、続く3話で彼女の苛烈さや思いやりのなさは、長年の友人に対しても容赦なく発揮される事が描かれます。
ミス・パーフェクトを友人に持ち「自分は価値がない」と思いこんでいるNan。
認められたくてPok君が利用したデートアプリに登録をする。
ちょっとした出来心からPapangの写真を使ったら申し込みが殺到。
気を良くしていたのは最初だけ。
同じアプリを(まだ!)使ってたPok君経由でPapangちゃんの知るところとなる。
「コイツゼッテーしめてやる」
と鼻息あらく真犯人暴きに血道をあげるPapangちゃん。
Pok君への仕打ちも間近で見てきたNanちゃんは、自分がどんなお仕置きをされるのか怖くて「自分がしました」と切り出せない。
正直、Pok君の罪より、Nanちゃんの方が「重い」と思うので、お咎めなしとは行かないと思うんですが。
Papangちゃんの剣幕のあまりの激しさに「もうその辺で許してあげてもいんじゃないしょうか?」と思わされてしまいます。
Papangちゃんの、友人に対する発言、態度、そして表情(これが秀逸。好感度しかないTorfunをやった人とは思えない)がひどすぎて……。
ソシオパスなんじゃ?
と思いたくなるレベルで他者への思いやりがない人だという事を、この2話で「これでもか!」ってくらい見せつけられます。
これをかっての友人たち(Papangにとって彼女たちは本当に友人だったんだろうか?)から聞かされた美貌の兄がどう感じたのか、あまり描写されていないのですけど。
僕はこの3話までの展開で「めちゃくちゃイヤなやつだな」という印象に変わってしまいました。
その後の彼女の評判が失墜していく顛末に、一瞬「ざまぁ」と感じてしまったのも事実です。
そして、この話が本当に「(いい意味で)いやらしいな」と思うのは^^;
2話と3話と見続けるうちに、Papangちゃんを取り巻く人物と同じ目線で彼女を見つめる立場になっていて。
彼女の転落劇に「いい気味じゃん。ざまぁ」
と思ったその直後に「でも自殺しちゃうんだよね」と思い起こさせる構成になっていること。
「正論で逃げ場をふさいでから、容赦なく人を責め立てる感じの悪い女」という側面もあったかもしれないけれど、死に至るまで追いむ必要はあったのか。
現在パートに戻って来る度に、その問いが浮かばずにはいられない。
花持ちならない優等生の転落劇に昏い喜びを感じた生徒たちが、「自殺した」と知って感じただろう後ろめたさの追体験になっている。
形容しがたい座りの悪い感情を見ている側に残しながら「では実際、彼女の背中を最後に押したのがなんだったのか」の謎で今後の展開への興味を引きつける。
啓蒙的の側面と娯楽的な要素が、ちゃんと相乗効果をあげているのが素晴らしいと思います。
全5話なので、次回でおそらく最終回。
待て次号!