ギホンは元情報局のエージェント。
病に侵されあばら家で1人苦しみのたうつ彼に、旧知の仲の情報局員アン局長から新規の依頼。
それは奇跡的に誕生したクローン人間・ソボクを安全な場所へ護衛するというものだった。
当初乗り気ではなかったギホンは、不死であるソボクの細胞を使えば病を治せると言われ護衛の任を引き受ける。
当然のように移送車は襲撃を受け、ギホンとソボクを残して全滅。
ラボの外に出たことがない純粋培養のソボクを連れて、次々と現れる追手を振り払い、逃避行を続けるギホンだが……。
というのが冒頭のあらすじです。
性格の違う2人の人物が、喧嘩しながらも旅を続けていくウチに堅い友情に結ばれる、いわゆるロードムービーの形式を取っています。
打算で行動する護衛者と無垢な存在の組み合わせは傑作「レインマン」の2人を思い起こさせますし、医療用のクローン人間という設定は「わたしを離さないで」を彷彿とさせます。
さらにソボクには開発の途中で重力を自在に操る超能力が芽生えてまして、後半は「AKIRA」の鉄雄もまっさおの暴走超能力者っぷりを発揮します。
とまぁ、設定はあちこちどっか既視感があるのですが、違和感なく1つに組み上がってるので引っかかりを感じる事はないでしょう。
銃撃戦にカーチェイス、はては超能力と派手めアクションシーンもウリの一つではあるのでしょうが、やはり作品の一番の魅力は主演2人の心の交流にある。
ギホンを演じるのがコン・ユさん。ソボクを演じるのがパク・ボゴムさん。
経歴などを拝見すると、どちらの役者も甘めの役でブレイクしたようです、が。
僕にとってはコン・ユさんは「新感染」の主役の人。
新感染では、物語が進むにつれて、情が薄くて自分と娘が助かればそれでいいと思っていそうな好感度ランキングの底辺をぶっちぎりそうなキャラクターを演じておられました。
今回は相方・ソボクが設定上表情の起伏に乏しいという事もあるからか、激しく怒り、戦う姿がとても印象に残ります。
一方の相方、ソボクを演じるパク・ボゴムさんに至っては、この作品で初めて演技を拝見しました。
ラボから一歩も出た事がなく、生活のすべてを研究員に管理されている究極の世間知らずを凝縮したような無垢でつぶらな瞳には、おもわず「守ってやらな」と庇護欲を掻き立てられます。
ひるがえって、怒りで超能力モンスターと化す後半には、子鹿のようなつぶらさは微塵も残っていなくてですね。
素晴らしい特殊効果との相乗効果でおもわず「こわ……」とつぶやきそうになる空恐ろしさを感じさせます。
実はどちらも雄弁に語る人物ではないしテンション高めにハシャぐ状況にないので、中盤この2人が心を通わせていく場面も、静かというか、内省的というか。
相手にぶつかっているように見えて、実は過去の自分に対して、怒りとか、やるせなさをぶつけてるような印象を感じましたね。
以上。
待て次号!