タイBL、タイドラマに浸かる日々|サバイなブログ

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韓国映画『メソッド(메소드)』はBLにあらず。これは役者の業についての物語。

前から気になっていた韓国映画『メソッド(메소드)』

ネットフリックスに来ていたので見てみました。

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ありとあらゆる職業に「型」というか「作法」というか、うまく進めるための方法論があります。 

演技も当然例外ではなくて、リアルな人間として役を生き、自然な感情を表現するための様々なシステムが提唱されてきました。

この映画のタイトルにもなっている「メソッド」はそんな演技法の一つであり、代表的なものの1つ。

 

古くはマーロン・ブロンドやアル・パチーノ

最近でもジョーカーのホアキン・フェニックスなんかも役作りのために使用しているこのメソッド演技法。

すごく簡単にそして乱暴に説明すると^^;

「役の気持ちを知るために、役が置かれた状況を徹底的に分析。そのうえで役の置かれた状況を実際に経験し、その経験を演技で追体験していく」

という演技法です ※1。

 

リアルな演技を生み出せる反面。

役が体験するだろう過酷な生活を自らに強いて健康を害したり、ずっと避けてきた過去のトラウマを役のために掘り下げて精神のバランスを崩したりと、この演技法は役者自身の生活やメンタルに強い負荷をかける事になります。

 

映画『メソッド(메소드)』は、まさにそんな

『演技にのめり込むあまり、現実との境目を見失いかけた3人の男女』

の有様をサスペンスフルに描いた物語。

 

 

 

メソッド役者として定評のある中年の男、ジェハ。

彼の次の舞台は男性同士の恋を描いた2人芝居。

パートナーとした起用されたのはボーイズグループのメンバーヨンウ。バイク事故がきっかけで自粛していたヨンウにとって、この作品は復帰作になる。

 

当初は渋々といった様子のヨンウだが、ジェハの演技と演技への姿勢に惹かれて、能動的に舞台に関わるようになる。

ジェハの演技スタイルであるメソッドに興味を持ったヨンウは、自らもメソッドの手法を取り入れて役にアプローチする。

恋人同士という役柄のジェハとヨンウ。

互いを見つめる眼差しは、やがて熱っぽく絡みだす。

ジェハの恋人ヒウォンはそんな2人を間近で見ていた。彼女の心はさざなみを立てる。

 

イケオジと美少年の恋物語というパッケージから、BLと謳われている事も多いようですが、この映画Boys Loveではないと思う。

中盤のジェハとのキスシーンはタイドラマ『WhyRU』ばりの妖艶で美しいシーンに仕上がっていましたけど(必見ではあります^^)映画を通して描かれているのは役作りにのめり込む2人の役者が「役としての感情なのか自分の感情なのか、よく分からないままお互い惹かれあっていく」様子。

演技の過程で生まれた感情に役者が飲み込まれてしまい、あわや私生活を破綻させかける。

虚構の中にリアルな感情を持ち込むことで、役に命を与える役者という職業の業を描く事が主眼だったんじゃないのかな?

と感じます。

 

名声もあり、若く美人の彼女もいるイケオジジェハ。メソッド役者として場数を踏んでいる彼が「役の感情に飲み込まれてしまう程」怪しい魅力を開花させる事になったヨンウさん。 

このヨンウ君を演じているのは、実際この作品がルーキーだというオ・スンフンさん。

ビジュアルがタイドラマ『Love mechanics』のMarkことWar君にとてもよく似ていますね(本編の方が数段似てます)。

あまり売れてなさそうなボーイズグループメイクの序盤はジェハに食われっぱなしなんですが、中盤からは怪しい魅力を開花されていきます。

 

 

BLじゃないよと書きましたが、「2人の間に本当に気持ちがあったかも」と思わせるような描写もあるのが心憎い部分です。

たとえばジェハが演技のリサーチに使うノート。

本来、役への洞察がビッシリ書かれるこのノート。全くの白紙で「つまりジェハは演技ではなくヨンウに本当に惹かれていたの?」と想像する余地を残してくれます。

 

いわゆるBL物の甘い結末にはなりませんが、なかなか楽しめる映画ではありました。

待て次号!

 

 

 

※1

映画の内容に合わせるために上記のようにまとめましたが、必ずしも役のために新しくなにかを始める必要もなくて、自分自身が過去に経験した類似の状況を探し出して、その状況を演技中に追体験するというアプローチが行われることもあります(と、演技の本には書いてあります)。

 

メソッド演技に関してはかなり雑に説明してます。

ちゃんと知りたいという方は、こちらを読むといいのではないでしょうか?

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