バッドジーニアスのヒットのおかげが、はたまた主演にBNKの子がいるからか。
タイ映画「HomeStay」が日本でも公開されています。
このエントリーでは久しぶりにタイ映画について紹介したいと思います。
さて行ってみよう!
タイ映画「HomeStay」のあらすじを
「当選しました!」
声に呼ばれて、少年は見知らぬ病院で目をさます。
夢かうつつかも定かでないまま、少年は「自殺したばかりの少年の体を借りる事(ホームステイ)ができた」魂なのだと聞かされる。
この体を正式に自分の物にする方法。
それは100日の間に少年が自殺した理由を突き止める事。
かくして少年ミンに宿った魂は、ミンとして生活する事になる。
ミンの事を心配する優しい母に風変わりだが気のいい父。
兄とはソリが合わないようだが、学校には友達もいるし、なにより上級生でチューターのパイは、優秀なうえにきれいな女の子ときた。
パーフェクトとはいかないけれどまずまず幸せに思えるミンの日常に、自殺につながるこれといった原因は見当たらない。
表面上は……。
森絵都の小説「カラフル」が原作
特殊効果満載のビジュアルに引きずられて、予告だけでは気がつきませんでしたが、この作品は「カラフル」という日本の小説を原作にしています。
この「カラフル」
小説として評価も高く、日本国内でもラジオドラマにテレビドラマ、アニメーションと一通り映像化されています。
ボクは小説以外でこの作品に触れるのは今回は初めて。
後半、号泣注意報が発動される展開で、モスバーガーでうっかり読んでたら顔をあげられなくなった感動の名作がまさかタイランドで映像化される日が来るとは思っても見ませんでした^^
制作はGDH556
本作の制作がタイでは有名な映画制作会社のGdh556というのも非常に頼もしいところです。
この制作会社。
カンニングをモチーフにしたサスペンス映画「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」をはじめ制作した作品のほとんどがヒットを飛ばしています。
数年前からドラマの制作にも進出しており4つのスポーツをモチーフにしたオムニバスドラマ「Project S」はウェブでも公開中。
英語の字幕しかありませんが、なんとYoutubeで日本からでも閲覧が可能です。
そしてそのProject Sのシリーズの中の「S.O.S」でも主役を努めたティーラドン・スパパンピンヨーは、本作HomeStayの主役も努めておられます。
HomeStayの主要キャスト
ミン役
日頃タイドラマ慣れしてる人間にとっては本名よりもニックネーム(チューレンと呼ばれます)のJamy君の方が一般的ではないでしょうか。
前述したようにProjectS SOSでも主役を努め、鬱に悩んで自殺を繰り返す高校生という、本作のミンの上を行くハードな役をこなしています。
かと思えば「バッドジーニアス」では頭の軽いおぼっちゃというチャラい役を、実に軽快に演じていました。
役ごとに雰囲気をガラリと変えてくるなかなかのカメレオン役者です。
とあるインタビューで本人は自分のことを「遊び人」と称しており、実際髪の色も赤やら金やら、ちゃっらい感じにコロコロと変えているのですが、なかなかに仕事熱心な人でもあります。
パイ役
Cherprang(チャープラン・アーリークン)
ミンのチューターであり、恋の相手パイを演じているのはBNKのセンターをつとめるCherprangちゃん。
猫目なのにキツく感じられないのが不思議。
この方はチューレンを使ってなくてCherprangで通してるみたいですね。
さすがは現役アイドルというべきか。華があります。
2人の他にも「すれ違いのダイアリーズ」の主役を努めたPloyさんがナース役でプチ出演したり、Project Sの2作目にあたるSide by Sideで主役の母として重要な役どころを努めたSuquanさんなども登場します。
Love by Chance、Tharn&TypeでKenglaを努めたMarkSiwat君が、なんと台詞なしの部員の男子としても登場します。
今ならそんな端役では起用されないでしょうね。
さて長々と作品のデータを紹介してきたHomeStay。
実際見てどうだったのか。その感想を!
ネタバレしますよ。
まず見どころは、予告編でも散々っぱら紹介されているビジュアルエフェクトを駆使した美しい映像の数々でしょうか?
さまよえる魂のガイド役として物語の要所要所に登場する天使。
その度に現れるハリウッド映画っぽいだまし絵のような変わった映像は、これまでタイ映画ではあまり見かける事のないものでした。
お話的には、すでに述べたようにほぼ「カラフル」のまんまなのですが、大きく変更された点が一つあるのに気が付きました。
それはパイの人物設定。
原作でパイに該当する人物は、今を楽しむためのお金が欲しくて中年男と「契約」つまり売春をしています。
一方のHomStayのパイも、優等クラスの担任がする不適切な行為を受け入れてしまうのですが、それは遊ぶ金欲しさが理由ではなく科学オリンピックへ出場するために彼のサポートが必要だから。
この変更からは日本とタイ、2国間の現状認識の違いが垣間見えて面白いなと思います。
当の昔にピークを過ぎて「未来」に待っているのは下り坂。
この先に希望を持ちづらい日本版では「今」を楽しむ事がなによりも重要。
一方HomeStayでは「未来」を実りあるものにするために「今」降りかかる不愉快な出来事に目をつむる。
まだまだ成長していく余地があると国民が感じられるからこそ、未来に希望をつなぐ事ができる。
互いの国民が抱いている空気みたいな物が、パイの人物設定の変更から透けて見える気がします。
原作を読んでいるからかもしれませんが「魂」と「自殺したミン」は別の人物なんですよ。
という説明が冒頭で適切になされているように感じられませんでした。
「自殺を図った衝撃で記憶喪失になった」ように、つまり「魂」と「自殺したミン」が同一人物のように感じられてしまうんですよね。
だから「ミンはなんで自殺したのか?」というミステリー的な引きが弱くなってしまい、中盤までは年上のきれいなお姉さんとの淡い恋のお話がメインになってしまったように思います。
たぶんこの「魂」と「ミン」は別人格だという設定が、自分的にキチっと収まりきらなかったので後半のお母さんの告白とか、お兄さんとの会話があまり(ボク的には)胸を打ってきませんでしたね。
原作では「自殺してしまった少年」に言ってあげるべきだった言葉を、縁もゆかりもない「魂」が聞かされている。
「それ本人に言ってやれよ」と感じた「魂」が体を少年に返そうと奮闘し「自分こそが自殺した本人なんだ」と気づかされるという展開になるのですが、この映画ではその部分も少しあやふやで「魂」は自分からはアクションを起こさないのに自分の正体に気付いていくのが残念だなと思います。
スタジアムのパネルアートは「カラフル」という邦題にリスペクトした絵的に映える美しいシーン。
このパネルアートをきっかけにして「魂」が自分の素性に気づく展開は原作を踏襲しながら、はるかにインパクトの強い映画ならではのシーンになっていましたね。
絵的には映えるシーンたくさんあったので、やはりふわっとしたシナリオが残念な気がしました。
まぁこれはボクが原作が大好きだからかもしれなくて、この映画を初見でみたらラストのネタバレにきっちり驚けるのかもしれません。
というわけで。
待て次号!