ハッピー・オールド・イヤーにつづいてのGDH作品のご紹介。
とはいえ、こちらはNETFLIXオリジナル。
「断捨離」をテーマにしっとりとした人間ドラマに仕上がっていたハッピーオールドイヤーとは打ってかわって、よくもわるくもネットフリックスらしいスピード感と意外な展開をもつ作品となっています。
そんな「ゴースト・ラボ: 禁断の実験」の感想を
バンコクの大病院に務める若き医師、WeeとGla。
若干チャラめのGlaさんと、寝たきりの母を看病している内向的なWee。
正反対の性格なのになぜか気の合う2人は、ある日病院内で霊現象を目撃する。
幼少の頃に父の幽霊を見たことがあるGlaは、1人密かに『幽霊が実存するかどうか』の研究をしていて、今回の件で『幽霊はいる』という確信を得た。
使われていない旧病棟の一室を実験室に『幽霊が存在する』事を科学的に証明し、学者として名声を得ようとする2人。
共に霊感が強いのか。引き寄せやすい体質なのか。
頻繁に霊現象に遭遇するも、科学的なデータは集まらない。
……ま。彼らが集めようと奮闘してるのは『幽霊がバッチリ写った映像』だったりして、それを「科学的データ」と呼べるのか若干疑問ではありますが^^;
あと一歩、決定打に欠けるという状況に2人は焦る。
「生前、親しかった人の元に霊は現れる」という仮設(俗説では?)を証明するためにGlaが考えだしたのは
「余命いくばくもない若い女性と恋仲になれば、彼女は死後に霊となって自分の元に現れる(そうすれば実験に協力もしてくれる)」という……。科学的とは言い難い提案。
「科学者として名声を集める」という野心に取り憑かれてしまったGlaとは違い、Weeはこの提案に「倫理的にどうなんだ?」と意義を唱える。
その最中、Weeの母の容態が急変。
延命するかしないかという苦渋の決断を迫られたWeeは、彼女を楽にしてあげることを選んだ。
と、映画の3分の1あたりまでのあらすじをササッとまとめてみましたよ。
文章にこうして書いてみると……。
前提となる仮設がちっとも科学的じゃないし 、やってることも大学生の心霊サークルレベルだし、医者という設定の割に倫理感がちょいおかしかったりと、苦笑するものが多いのですが^^;
視聴中はまるで気にならないんですよね。
映画はこのあたりまでは、かる〜いトーンで話が進んでいくので、設定の軽さとバランスが取れているからかもしれません。
さて。
2人は幽霊が実在することを(心霊サークル活動で)を確信しています。
しかし学会に発表するには決定打となるデータ……というか証拠がほしい。
そんな中、不幸にもWeeの母親が世を去った。
当然2人は母親がWeeの元に現れるという仮設に基づき、実験を行います(ほぼカメラを設置するだけですが^^;)。
と。
ここから映画は予想不能な展開に流れこみます。
映画も、モダン・ホラーっぽい作品もそれなりに見ているんですが、こういう展開になった作品を僕は知りません。
逆パターンならとても有名な作品があるんですけどね。
予想不能な展開は2段階構成になっていまして、最初の一発目で「え?それマジで言ってますか?」となり、
2発目では唖然……。となりました。
この急展開に合わせるように作品のトーンもガンっと変わる。
軽妙なやりとりは影を潜めて、以降はひたすら内省的な展開が続きます。
だから感じる恐怖の質も変わります。
前半は、素人映像風に撮影された怪奇現象にヒヤッとさせられるんですが、後半は野心とストレスで精神的に追い込まれた主人公。
その常軌を逸した行動に背筋が寒くなる。
狂気に飲み込まれていく様を役者さんが迫真の演技で表現していて、非常に引き込まれる展開です。
彼が目にしている事は現実なのか。それとも願望なのか。
全面的に共感を寄せるべき主人公の言動を百パーセント信じられない状態なので、彼のあらゆる行為が怪しく映る。
そもそも2発目のアレも本当に我々が見た通りなのか?
もしかしてアレも彼がした事ではないのだろうか?
意図的に不明瞭にすることでサスペンスが最後まで、なんなら見終わった後まで興味が持続する。
実はこの中盤の展開も、視聴後に考えてみると「いくらなんでもそこまでしないだろ?普通」という展開なんですけれど、やはり見てる最中にそれが引っかかる事はない。
視聴者の気持ちを丸め込んでしまう、不思議な力を持った作品でした。
このエントリーを執筆時点、ネットフリックスでご視聴が可能です。
NadaoBangkokの看板役者のTorさんと、シンガーとしての才能もいかんなく発揮しているParisさんの演技の幅を担当できるし(全体的に実はかなり強引ながら)誰も予想しない展開で最後まで飽きない作品になってます。
ぜひご覧ください。
待て次号!