個人的に肩透かしだったネトフリドラマ版『返校』に続いて、今回は!
真打ち劇場版『返校 言葉が消えた日』について語ってみたいと思います。
舞台は1960年代の台湾。当時の台湾は戒厳令が敷かれており厳しい言論統率が行われていた。
そんな中、翠華高校ではイン先生とチャン先生を中心とした一部学生たちが、やがてお訪れる「自由」を渇望し禁書を読んで書き写していた。
所持してる事が憲兵に見つかろうものなら強制連行され、拷問、銃殺と、まさに命がけ。そんな一触即発、鬼気迫る空気感の中。
主人公の片割れファン・レイシンは学校の自席で目を覚ます。あたりはすでに薄暗く他の生徒は誰もいない。
灯したロウソクを手に持って1人校内をうろついている内に、彼女は1つ後輩の男子学生ウェイと合流、2人で校内を脱出しようとするが……。
全部で3部構成になっています。ウェイとファンが過去の事情もよく知らないまま、読書会の仲間を探して怪しい校舎を徘徊するホラーテイスト感が強い第一部。僕はこの序盤戦が一番好みですし、ベースになったゲーム版のテイストが一番反映されているのも、このパートではないでしょうか。
第二部は「密告者」という章タイトルがつけられていて、誰がいかなる事情のもとに「(禁書の)読書会」を憲兵に密告するに至ったかが描かれています。廃校描写は特に前半は抑えめです。
書かれる事情はゲーム版と同じなのですが、ちょっとしたひねりが加えられていて。
まぁ言われてみれば確かに密告者は厳密にはあの人ですよね?
とゲーム版をやって(もしくは実況で見て)ストーリーを知っている人でも驚く解釈が加わることで……。いや正確には自分ごととして見せられる事で、よりショッキングな印象を受ける展開になっています。
ゲーム序盤の最大の見せ場?というかエゲツなシーン「ウェイ君を捧げよ」のシーンもエゲツなく再現されていて原作リスペクトという意味ではポイントが高いです。
しかも「そっから、それ出しますか!」という映画独自の演出も効いている。
第三部はそれから十年以上経過してからの後日談。ゲームにはなかった「救済」が描かかれるパートです。
ゲーム版との大きな違いはストーリーをファンとウェイの2人が交互に進める構成になっている事でしょうか。
ゲーム版は序盤がウェイ。以降はファンとぱっきり2つに分かれているので。
このダブル主演形式の採用が、この映画を成功に導いた最も重要な部分だと個人的には思っています。
ファンの視点からは見えてこない、読書会の人間ではないファンでは感情的に盛り上がらない人物の性格や立ち位置の紹介なんかも、ウェイのパートでなら感情的な盛り上がりを保ちながら描いていける。
くわえて主役を2人に設定することで、お互いが救われるために助け合う様子を描く事ができるし、なんと実際救済されるので、ゲーム版のどうしようもない無力感がなく、作品の後味がそこそこ爽やかなんですよね。
100分近い映画見て、まるで救いなく終わるのも損した気分になるっちゃなるので、その辺も良い修正じゃないかなと思います。
ちなみにウェイ君を演じる曾敬驊(Tseng Jing Hua)さん、どっかで見たことあるなと思ったら台湾発のBL映画「君の心に刻んだ名前」のバーディー役をやっていました。
サスペンス・ホラーという銘打つ割にはさほどエグい描写は多くなく、中盤はラブストーリーの要素も強いので極端に苦手な人でないかぎり、軽く背筋をヒヤヒヤさせつつ楽しめるのではないでしょうか。
というわけで待て次号!
ドラマ版についてはこちらから。