全編ワンカット、縦型フォーマットのサスペンスドラマ。
その後編となる
『BLACKOUT』5話〜8話の感想を
4話までの感想は↓↓↓↓
1話から4話までは場所と時間軸はほぼ同じ。
物語を語る視点人物を各話ごとに変える事で、現在の状況がぼんやりと浮かびあがってくる仕様になっていました。
5話からは「なぜこんな事になったのか?」という過去パートと「どう落とし前をつけるのか?」という現在パートが入り組みながら進んでいきます。
4話までの特徴として全編ワンカットで撮影されているというのがありますが、5話からは一転、通常のドラマのように内容に応じたカット割がなされています。
ただし過去パートのみ。
現在パートは引き続き、ワンカットにこだわって撮影されておりまして、カメラワークの違いで「今は過去」「あ、現在に戻ってきた」というのが分かる作りになってます。
時間軸が変わったことをあらわす映像表現として一般的なのは、
フェードイン・アウト(画面がぼんやりと切り替わるやつ)
効果音(シュンッみたいな音をいれることで時間を飛び越えた事を伝える)
画面の色を変える(過去パートはモノクロっぽくする)
あたりなのですが、カメラワークの違いだけでそれを表現するのは僕にはとても新鮮に感じられました。
過去パートは一般的な撮影技術で構築されているので、照明含めた絵づくりが高いレベルで安定してます。
人物のフルショット(頭から足までの全身を画面に収めること)がとてもスタイリッシュに見えるのは、縦型というフォーマットの特性によるかなと思います。
では肝心のお話の方はといいますと。
過去の4人に一体なにがあったのか?
どういう経緯で、バーの隠し部屋で記憶を失い、ちりぢりになっていたのか?
という部分にさほど意外な展開はありません。
4人いる登場人物の最もうさんくさい人物が^^;
いかにもゲスい企みをした結果、自業自得な目にあって……。
1話〜4話の流れに至る。
問題なのは、というよりもこの後半戦を激しく面白くしてるのは、うさんくさい人物が外道を働くために協力者が必要になった、という事。
一見自分にはなびかなそうな協力者。
うさんくさい人物が目ざとく協力者のわだかまりに気づき、言葉巧みに、そして執拗にこの協力者をゆさぶって、自分の味方につくように仕向けていく。
対する協力者の方は、自分の心の中でうごめく『嫉妬』に気づいているし、そんな自分を嫌悪している。
にもかかわらず、うさんくさい人にそそのかされて「あの人を少し苦しめたい」という誘惑に揺れる。
口ではNOと言いながら、その誘惑を抑えられない。
何度も何度も良心で押し止めようとするものの、うさんくさい人によってじりじりと絡め取られていく。
このせめぎあいを描いた部分がこのドラマの白眉。
揺さぶる側、揺れる側、ともに鬼気迫る演技で、すでに現在パートを見ているにも関わらず「協力者は負けないのかもしれない」と最後の瞬間まで思わされます。
協力者の葛藤と敗北が十二分に描写されているので、いざ協力者が誘惑に負け悪事に加担することになっても、協力者への共感が薄れたりしない。
友人への嫉妬と、そんな自分を嫌悪している様子がしっかり描写されているので、むしろ協力者への同情の念が強くなる。
協力者とうさんくさい人の心理戦が過去パートの見どころなら、現在パートの見どころは協力者とはめられた人が互いへの気持ちをぶつけあう部分。
2人のすれ違いは短い過去パートの中で効果的にほのめかされていましたが、うさんくさい人の計略により表面化。
仕掛けいっぱいのミステリーハウスと記憶喪失という、ケレン味はあるけど厚みのなさそうな設定でドラマは始まったのに、ネタバレと共に、『嫉妬』に焦がれて、大事な人を失ってしまう人間ドラマへいつのまにか変わっている。
序盤こそ、やれ縦型だ、やれワンカットだ、というギミック的な部分に目を奪われがちですが、見終わって印象に残っているのは後半に展開される人間ドラマ。
特別な存在への親愛の情を歌った曲をバックに、もはや修復は不可能な2人の決別を見せられるラストは苦い余韻を残します。
結局のところドラマは仕掛けではなく、ストーリーこそが王なのだ。
ということを改めて痛感する。
よく出来た人間ドラマでした。
Youtubeで閲覧が可能です。
お時間があればご覧ください。
読んでくれてありがとう。
また次の作品で!