これはもしや毎回祝祭縛りがかかってるのかな?と思って2話を見返したらハロウィンっぽいですね。
「一夜限り」の関係に本気になったアラサー男子(設定上)のWenさんが、ニヒル気取ったアラフォー(設定上)アンクルジムにターゲットをロックオン。
物腰こそ柔らかに、押しの一手で攻め続けて気づけばチキン屋の一員として、しれっと居場所を確保している、くわえて絶賛反抗期真っ最中のジムおじさんの甥っ子Li mingを手なづける和やか癒やし系男子Wenですら……。別の顔を持っている。
Moonlight Chiken 前半戦(3話〜4話)
時と場所と相手にあわせて人は複数の顔を使い分けて生きていく。
相手によって、タイミングによって、自分が持っている仮面の中から最もふさわしい物を選んで、その場にふさわしい顔を見せる。
リアルな人間が普通に持っている多面性をことさら強調して描いているのが、前半終えてのこのドラマの魅力だなと感じます。
Li mingは、過保護だと思っている叔父さんには仏頂面と口答えしかしないのに、欠けている者同士の同世代Heartの前では笑顔を見せる。
人生酸いも甘いも噛み締めた大人の男。厄介事にはかかわりたくないから一夜限りの関係が良い、とニヒル気取ってるジム叔父さん(毎回ジ◯ムおじさんと書き間違える^^;)にも、恋人と開いたお店になんだかんだ縛り付けられているセンチメンタルな一面がある(そして過去の叔父さんが、今の叔父さんに比べて若々しく青臭く感じられるのが、役者ってすごいなと感じたり)。
「嫌いなものとかあんまないです」「怒ったりとかあんましません」みたいな感情表現が常にマイルドなWenさんも、元カレと不本意ながら同棲してて、はからずも一緒のベッドで寝ています、チッ!
というやさぐれた一面がある事が3話のラストで明かされる。
そっかー。一話で良いこと(昇進が決定)があったのにチキン屋で一人酔いつぶれたのは「せっかくのいい日に家に帰って元カレと一緒の気まずい空気を吸いたくなかったから」だったんですね。
しかしいやー驚いた。ただベッドで男が寝てるだけなのに驚いた。しかも寝てる元カレはFirstさん。
「殺人事件の犯人が実が探偵の恋人だった」を大きく上回る最強クラスのクリフハンガーを挟んで(そりゃ小休止入れる間もなく)4話に突入。
2人の関係は終わってるとWenは認識してるけど、Alanはそれを認めたくはない様子。2人は自分たちの関係を比較的オープンにしてて複数の友人が彼らの関係を知っている。近々Wenは部屋を出ていくと言っている(個人的な見解を言うと、こういう人は意外とズルズル引き伸ばして長期間一緒にいる^^)。
これらの情報を分析すると「完全に終わった」というWenさんの見解は、若干身贔屓な見解というか……。
次の恋を探すにはちょっと身辺がだらしない状況というか。
次の相手も釈然としないし(おじちゃんちょっと傷ついてるぞ)、まだやり直せると信じてる(信じたい)元カレは絶対に修羅になりかねない状況で(実際に修羅場ったし)。
せめてJimおじさんを落としたいならコンドを出るか、Alanを追い出すかしてからするのが「筋」という物だと思うんです。
が。
ドラマとしてはWenのこのだらしなさこそが良い。
Lengの妊娠騒動もそうだし、無免許でしれっと原付き乗り回してるLi mingもそうですが、このドラマは登場人物の善良な面、美しい行いを描く一方で、わざわざだらしない部分を切り取って「これもアナタが共感をもった人物の別の顔です」と投げつけてくる。
誰でも良い事もすれば、褒められない事もいっぱいする。2面どころか、幾つもの顔を、自分でも意識することなくその都度取捨選択していって、後から見返すと自分の行動は矛盾ばっかり……。
そんな人のもってるテキトーさを、良いの悪いのジャッジしないでフラットに描いていく。すごく月並な言い方をするなら「人間がキチンと描けている」ので「目指すべき夢」を持ってなくても、焦がれるような恋に身をやつしてる人がいなくても(おっとGaipaがいるね)、鑑賞に耐える作品になっているのだと思いました。
そんな迷える凡庸な我々に「それでも明日はあるんだよ」と励ましてくれる挿入歌がこちらの曲です。
Fordさんは若くしてバラードプリンスですね。
待て次号!