タイドラマを扱う事が多いこのブログ。
今回はボクが、現在もっともオススメできるタイ映画「すれ違いのダイアリーズ」を紹介します。
すれ違いのダイアリーズのあらすじ
※起承転結でいうと「転」くらいまでの展開をかなりざっと説明します。
タイ北部チェンマイに住む青年ソーンは、教師の職を得るため地元の小学校を訪れる。
教師としての経験もなく、取り柄といえば、レスリングが得意というくらい。
熱意を売り込みなんとか得たのが、チェンマイからほど遠い、分校の住み込み教員だった。
ダム湖の奥にある水上学校。それがソーンの家になり職場になった。
荒れた校舎を片付ける最中。ソーンは黒板の上から一冊の日記を見つけた。
それは前任の女性教師エーンが残した分校での記録だった。
携帯の電波も届かない場所で、見知らぬ子供達と暮らす生活に、ソーンもエーンも、戸惑う。
蛇と戦い、流れてきた溺死体を片づけ、子どもたちと台風の一夜を過ごす。
都会の暮らしでは思いもつかない出来事が、次々と2人に降りかかる。
その度に2人は教師として成長し、子どもたちと心を通わせるようになっていく。
いつしかソーンは、自分と同じ孤独をかみしめ、この分校で奮闘していた日記の持ち主、エーンに淡い恋心を抱くようになっていた。
漁業で暮らす人が多いその土地は、教育への理解も薄い。
子どもたちに懸命に学問を教え、漁師以外の可能性を開いてあげたいと奮闘してきたエーンだったが、その想いが子どもたちには伝わっていない事を知り、モチベーションを失ってしまう。
別れた恋人に復縁を迫られた事もあり、エーンはチェンマイに戻っていった。
その後任として赴任したのがソーンだったのだ。
子供たちとも打ち解け、教師としての仕事にやりがいを見いだすソーン。
しかし教師としての力量が足らず彼らの一人を進級させる事ができなかった。
責任を感じたソーンは、大学に戻り学びなおすため、分校を去った。
チェンマイに戻ったエーンは、型にはまった都市部の学校で、思うように能力を発揮できずにいた。
さらに恋人の浮気が発覚。
チェンマイでの生活と彼との関係を断ち切ったエーンは、ソーンが去り、空きができた分校に戻ってくる。
整理された机の上に、自分が分校に残した日記を見つける。
エーンが去った後、引き継ぐように自身の経験や想いを日記につづったソーン。
彼の言葉を読み、エーンもまたソーンへの気持ちを育んでいく。
と、ここまで!
この後、2人が出会うのか!
いや出会うんですけど、どんなシチュエーションで出会うのかは、この物語のベストシーンなので、あえて伏せます。
見ましょう!
すれ違いのダイアリーズのボク的な見どころ
ラブ・ストーリーと紹介されることの多い「すれ違いのダイアリーズ」ですが、ボクは2人の若者(特のソーンの)成長物語であり、孤独と向き合う物語だと感じました。
もちろん、その結果としてラブも生まれるんですけども。
人はいいけど思慮が足らず、いまだ大人になりきれないソーン。
教師としては優秀だけど、既存の型にハマれず余計な衝突を生むエーン。
この2人が携帯も通じない田舎で初めての経験に翻弄されつつ、教師として子どもたちと触れ合っていく。
その中で、自分の傲慢さや、至らなさに気づき、人として成熟していく様子が物語全体を通して描かれています。
余談ですが
この映画の冒頭のシーンは「いまだ大人になりきれない」というソーンの人物を端的に表現していて、なにげないけど素晴らしいシーンです。
すれ違いのダイアリーズは「孤独とむきあう」ことを描いた映画だとも感じます。
携帯も通じない田舎、しかも湖に浮かぶ学校に赴任したエーンは自分の日記にひたすら「孤独」という文字を書いたりします。
友人と離れ、自分の選択に理解をしめさないパートナーとも別れ、ただ湖面を見つめるだけの時間の耐えがたい寂しさに共感するから、ソーンはエーンに親近感を感じていく。
孤独と向き合わざるを得ない環境におかれたから、ソーンもエーンも、日記の向こうにいる見知らぬ人に恋心を抱く事になるんだと思います。
絵の美しさに涙できる。高度な技術と豊かな想像力で生み出される美しい映像
「すれ違いのダイアリーズ」は技術面でもアグレッシブな作品です。
分校を台風が襲うシーンは邦画でも最近お目にかかれない臨場感があり、物語の緊迫感を高めます。
ソーンとエーンが分校で過ごす日常をワンカットで描いたシーンも素晴らしい。
流れるように水上学校の中を移動するカメラ。
ソーンと過ごす子どもたち。
エーンと過ごす子どもたち。
本来は別の時間軸にいるエーンとソーンをカットを割らずに見せる事で、2人が似たような体験をこの分校でした事を印象づけられるし、物語の最後まで出会わないソーンとエーンに絆を作りだすことにも成功しています。
絵的なクライマックスの1つ「汽車」のシーン。
ファンタジー映画のような斬新な絵を、疾走感あふれるカメラワークで書いてます。
ただ絵が美しいというだけのシーンではなく、物語上、この絵である必然性を持っている所も素晴らしいと思います。
全編を流れる軽快でありながら、時にノスタルジックな曲も涙腺決壊砲として存分に機能しているのですが、情報が少なく^^;
あまり多くを語れません。
でもいい曲です。
ソーンとエーンが初めて水上学校に向かう所の軽やかな感じとか。
そこから一点して水上学校が姿を見せた時の美しいメロディとか。
制作は、タイでは有名な映画製作会社GTH
過去にも「フェーンチャン ぼくの恋人」「愛しのゴースト」といった映画を制作、大ヒットを飛ばしています。
上記、2つは日本でも公開されました。
残念ながらどちらの作品もDVDでの視聴は今となっては難しい様ですが「愛しのゴースト」の方はAmazon Prime Videoで視聴できます。
実はこのGTHは独自のチャンネルを持っていて、テレビドラマの制作も行っていました。
代表的な作品が「Hormones(ホルモンズ)」
バンコクに住む高校生の日常を、セックス。ドラッグ、同性愛というどぎついテーマを交えて描き、大ヒットしています。
この作品から少し遅れて、別の放送局で放映されたのが大ヒットBLドラマの「Love Sick」。
同時期に同性愛を扱ったティーンドラマが2本もヒットした事が、現在のタイのBL祭りのきっかけになったようです。
出せば当たるヒットメーカーのGTH社ですが、実は解散しています。
少し会社の組織を変え、現在はGDH社という名前で変わらず精力的に作品を世に出してます。
代表的な作品が、このブログでも紹介している「Project S series」
そして日本では今年の秋、9月22日より公開される「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」もこのGDH社が制作をしています。
こちらもタイ本国を含め、アジア各国で大ヒットした話題作です。
すれ違いのダイアリーズを見る方法
日本での劇場公開は2016年に行われましたが、実は未だにあちこちの単館で上映されているようです。
とはいえ、シネコンならいざしらず、劇場に足を運ぶのは中々大変。
今はもっと手軽にこの作品を見ることができます。
◯ 映像配信サービス
「愛しのゴースト」と同様、Amazon Prime Videoで視聴ができます
加えて、さらにはFODプレミアムやNetflixでも視聴する事ができます。
◯ DVD
そしてもちろんDVDも出ています。
楽天ショップ
本数は少ないかもしれませんが、TSUTAYAでも置いてあるかもしれません。(ボクの近所では一本のみ)借りて返してがめんどくさくない方は、探してみてもいいと思います。
というわけでボクの間違いなく現時点で最もオススメのタイ映画「すれ違いのダイアリーズ」を紹介しました。
ほっこりできるヒューマン・ドラマであり、ラブ・ストーリーであり、タイの美しい景色にうっとりできる、本当に素晴らしい作品です。
ぜひ、ご覧になってみてください!
んでは。